無隣館若手自主企画 vol.29 野宮企画『イチゾウ』の稽古場より②

こんにちは。木村恵美子です。
今回は20日に初日を迎え、日曜日、24日まで公演中の無隣館若手自主企画 vol.29 野宮企画『イチゾウ』の稽古場より、劇場入り後の様子をお届けします!

劇場(春風舎)入りした野宮企画、注目すべきは美術、音響、照明との融合かと思います。
今回美術は鬼木美佳さん、音響・他は櫻内憧海さんですが、
なんというか二人とも、めちゃくちゃ凄かった、です。

まず美術監督の鬼木美佳(おにきみか)さん。
今回の野宮企画の美術は、「発想の勝利」×3 て感じです。
一個でもすごいのに複数ですよ……。

何がすごいのか書いてしまうと重大なネタバレなので今回は明記を避けますが、
見かけはシンプルなので油断しがちですが、ぜひ、油断してご覧いただければと思います。
あれやこれやどうなってるのか……。部分的には俳優と兼任で舞台監督を務めている黒澤多生さんの技術によるものもありそうですが、詳細がめちゃくちゃ気になるところです。
映像作成、オペもされているのですがこれも良いです。
野宮さんと相談しつつコツコツ重ね上げていて、出来ていく様子がとても興味深かったです。

そして音響・他の櫻内憧海(さくらうちしょうみ)さん。
「他」って詳細を書くべきか否かわからないので今回は伏せておきます。

櫻内さんの特に凄いのは、「劇場で作曲している」点……。
えええ、嘘でしょ!? っていうくらい次から次へ音が作られていました。
正直写真を撮っていて目を疑いました。(いや、ここは耳なのか?)
え、じゃあ櫻内さんが関わっていたあの公演もあの公演も、櫻内作曲だったのか……?
今回の劇場入りで初めてこの事実を知った私。(中村企画でも音響で入っていただいたのに……)
思わず色々聞きだしたくなりましたが、今回は我慢しました。そのうち聞きたいです。
またこれはごく個人的な感想なのですが、以前櫻内さんの音響のお芝居で「爆音がつらい」作品があったのですが、今回は良い塩梅でした。爆音苦手仲間の方、ご安心ください……。(演出途中で変わる恐れは0ではないですが)

また劇場入りして山下さんの振付も全貌が見え、
全員で同じような振付をする部分もありつつ、個々人の身体性に合わせた振付がついているのもよくわかり面白かったです。


身体演出は山下さんにゆだねつつ、テキストならびにその読解、演技演出面は野宮さんが梶をとる。
全体的な視覚、聴覚へのアプローチは鬼木さん、櫻内さんに委ねる。
そして最終的なバランス調整も野宮さんがして、作品としての仕上げをしていく……。
総合演出・詩作・構成 と野宮さんは書かれていますが、
あえて他の表現をとるならば、
楽譜・指揮 みたいな感じかな、と思って拝見しておりました。

あとはそれらを体現する俳優陣、ですが。
稽古で拝見した時以上に、
「その俳優さんの素敵なところ」
を捉えて役割分担であったり振付がされているな、と改めて思いました。

作品全体の主旋律を務めるのは名古屋愛(なごやめぐみ)さん。

容姿や存在感にどこか非現実的なものをもつ名古屋さんにこの役割をもたせることで、
作品全体の非現実感をより強めているのではないか、と思いました。

また、他のメンバーにもソロシーン等があるのですが、
例えば小野亮子さんは独特の声質に関西弁のコンボで、標準語圏で育った自分としては絶妙な質感に感じられて、超好きです。

小野さんはちょっと不思議なセリフを言う場面が多く、その絶妙な声の質感がそのちょっと不思議なセリフにもちゃんとそこに存在しているような実感を持たせているように思えて、いい塩梅であるなあと木村は思っております。

逆に南風盛(はえもり)さんは日常会話にも不思議な質感を持たせてくれるので、それもまた好きです。小野さんと南風盛さんの2人の存在感が、作品のふり幅のあるテキストを同一ライン上に持ってきているような気がします。

それから男性陣。黒澤多生(くろさわたお)さんと外桂士朗(そでけいしろう)さん。お2人の似たアングルの写真……。

2人とも独特な良い声の持ち主なのですが、2人が同時発語した時の音のバランスがめちゃくちゃ好きだな。とまず思いました。

また2人は全く別種の身体性の持ち主で、山下さんのそれぞれの活かし方も素敵だな、と思いました。これは、体感してみていただきたいです。ネタバレに直結してしまうので、男性陣はこのくらいで……。

また、一貫して舞台に存在し続けているアレ。アレ、木村はとても好きです。

またネタバレありの記事も書きたいと思っておりますが、今回はネタバレ避けつつこんな感じで切り上げようと思います。
とにかく、無隣館3期の中でも特殊な文脈をもつ人たち(身体表現、美術、音響など)をあつめて、無隣館の2年間の最後の最後にこんな公演を打つ野宮さんが木村はめちゃくちゃかっこいいと思うので、ぜひ、体感してみていただきたいなと思います。

観てみたいと思っていただけましたら、詳細や当日券情報などは野宮企画のTwitterからご覧いただけますと幸いです。。劇場にて、お待ちしております。

**公演情報**

無隣館若手自主企画 vol.29 野宮企画
イチゾウ
詩作・構成:野宮有姫
2019年3月20日[水] – 3月24日[日]

宮沢賢治作品―特に童話『よだかの星』と詩集『春と修羅』を種として試みる詩作実験、或いは、演劇。
無名の詩人が現代の都市を描いた新作詩集を、
俳優の身体とインスタレーション的舞台美術を以て立体化する。

今日ここから、ひとつずつ五感を壊してゆく。
語るに足らぬいきものへ。
正しい進化だろう。

反吐の海で窒息しても狂わぬよう、
なんて、それすら見栄だ。

正当化するに足る痛みなんて知らない。
ほんとうはただただすべてが面倒なだけ。
生理痛みたいな怒りだ、
なんて、彼がいうから少し笑った。

独り善がりなきみの紫。
飼い殺されたぼくらの橙。

ぜんぶ映した、酉の空。
(無名の詩人の詩集より 抜粋)

これらのデッサンは或るひとりのひとへ捧げることにする。そのひと自身の肖像として。痕跡として。シャッターの音。或るひとりの人間を想うことは、社会と時代と遭遇することであり、僕ら自身の生命や思想に気がつくことであるとする。自明の仮定だ。シャッターの音。この宇宙の何処かに存在する語るに足らぬそのひとへ。相変わらずハンバーガーは嫌いで、無心にかぶりつくきみはとても■■■■■。

詩作・構成:野宮有姫

野宮有姫
詩人を称する演劇人。無隣館三期演出部所属。
2009年、都立駒場高校演劇部の同期と企画団体シックスペースを旗揚げ。
以降、同団体中心に、詩作・演出活動を続ける他、映像シナリオ提供・作詞提供・WSコーディネート、最近は高校演劇部での講師などを行う。
詩を母体として演劇やアートセッションなどへたち上げる方法を確立中。
酒と猫とひととことばをこよなく愛している。

【出演】
小野 亮子
黒澤 多生
外 桂士朗
名古屋 愛
南風盛 もえ

以上、無隣館

【スタッフ】
総合演出・詩作・構成:野宮 有姫(無隣館/シックスペース)
美術監督:鬼木 美佳(無隣館)
振付:山下 恵実 (無隣館/ひとごと。)
舞台監督:黒澤 多生(無隣館)
⾳響・他:櫻内 憧海(無隣館/お布団)
ドラマトゥルギー:朴 建雄 (無隣館)
制作:笠島 清剛(青年団)、百瀬 みずき(シックスペース)
制作補助:井上 哲、中村 奏太(無隣館/アルココチ)
宣伝美術・撮影:大西 沙絵子(シックスペース)
協力:陳 彦君(青年団)、森 一生(無隣館/阿佐ヶ谷スパイダーズ)、木村 恵美子(無隣館/kazakami)
総合プロデューサー:平⽥ オリザ
技術協⼒:⼤池容⼦(アゴラ企画)
制作協⼒:⽊元太郎(アゴラ企画)

【日時】
2019年3月20日[水] – 3月24日[日]
3月
20日(水) 19:30★
21日(木) 14:00 / 19:00◆
22日(金) 14:00 / 19:00◆
23日(土) 14:00◆/ 19:00
24日(日) 13:00 / 18:00
受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前
※上演時間は60分前後を予定。
★=初回割引(500円引き)にてご案内
◆=アフタートーク有り
21日(木)19:00~ 永方 佑樹(詩人)
22日(金)19:00~ Piko Okabe(アートディレクター・アーティスト)
23日(土)14:00~ 森山 亜希(油彩画家)

【料金】
予約|2000円 ※初日は割引価格1500円
当日|2500円
*日時指定・全席⾃由・整理番号順での⼊場
*未就学児童はご入場頂けません。
★初日割引/リピーター割引
予約・当日共に、定価から500円引きにてご案内します!

【チケット取り扱い】
青年団 03-3469-9107 (12:00 – 20:00)
オンラインチケット予約はこちらから

【会場】
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原」駅 下車4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※公演期間以外のお問い合わせはこまばアゴラ劇場(03-3467-2743)まで。
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

【お問い合わせ】
Webサイト|https://nomiya-kikaku.amebaownd.com
Twitter|@nomiya_kikaku
Instagram|@ichizo_0

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