【ネタバレあり】無隣館若手自主企画vol.25 木村和博企画の稽古場より③

こんにちは、最近更新の頻度が上がっております。木村恵美子です。

今回も、無事公演の折返しを迎えました無隣館若手自主企画vol.25 木村和博企画『いっぱいいっぱい讃歌』より、本編のネタバレ(抑え気味)と共にお届けいたします! 12月9日(日)までです。どうか、お見逃し無く……!!

ちなみに前回、前々回の記事はこちらです。

ご無沙汰しております! 木村恵美子です! 無隣館の窓も無隣館若手自主企画も少し間が空いてしまいましたが、ここから12月、1月、2月、3月と毎...
こんにちは。木村恵美子です。今回もついに本日初日を迎えました、無隣館若手自主企画vol.25 木村和博企画『いっぱいいっぱい讃歌』の稽古場よ...

今回は出演者の振り返りと共にそれぞれの役について、また作品について書いてみたいと思います。このお話は両親が亡くなったばかりの兄弟と、兄の恋人、父の知人による4人芝居。タイトル『いっぱいいっぱい讃歌』の名の通り、それぞれの立場の「いっぱいいっぱい」な様が描かれています。

まずは青年団の串尾一輝(くしお かずき)さん。

串尾さんの役、1回目の記事で、うだつのあがらないダメな大人と書きましたが、その印象は変わらず。でもどーうにも憎めないです。兄弟の兄。

私が個人的に好きなのは、「兄」としての彼の描かれ方です。兄っていうか、「長子」と言った方が良いかもしれませんね。私自身長子なんですが、妙に共感というか、気になるポイントでした。周りにダメなところを見せることに躊躇するとか、弟との関係性とか、弱みの見せ方のバランス、とか。実は私が稽古場で一番にきむかずさんに質問したのは、「きむかずさんって兄弟いますか?」だったのですが、妹さんがいらっしゃると聞いて、ああ、なるほどなあ、と思いました。きむかずさんの家族との関わりまでは存じませんけれども、でも、長子だからこその観点がこの役にはちゃんと乗ってるんじゃないかな、と思います。

蛇足ですが衣装が私(木村恵美子)の私服の系統とそっくりで驚きました。笑

お次に無隣館の外桂士朗(そで けいしろう)さん。

外さんの役どころは兄弟の弟です。急に両親が亡くなったことで、一人で生活することになってしまいます。無隣館の講義の中でも「年齢不詳系俳優」と言われていた外さんですが、今回は高校生役です。高校生、に、見える! 私、稽古場でちょっとニヤニヤしてしまいました。どっちにも振れるって凄いことですよね……。実際は「兄の恋人」役の堀ちゃんと同い年です。

そうそう、串尾さんの役と兄弟の設定です。抜けてる兄としっかりものの弟……かな……?

この役のポイントの一つは”若さ故のいっぱいいっぱいさ”なのかなと思っております。坊薗さんの役との掛け合いがヒートアップするシーンなどは、いっぱいいっぱいの10代に起こりがちな現象かもしれません。(ええ、私自身覚えがあります……。)あとは、「可能性を奪われる」とか。うまく書けませんが、皆様何かしら「出来ると思っていたのに出来なくなってしまった」経験はあるんじゃないでしょうか。そういうことを思い返しながら見ると、とても味わい深い役だと思います。

そして外さんは作中に出てくるだけではなく実際にダンスの文脈がある方なのですが、要所要所にこっそり見える身体性の高さが面白いです。

続いて無隣館の坊薗初菜(ぼうぞの はつな)さん。

坊薗の役どころは、父の知人。葬儀に参列出来なかったため、挨拶に来ています。坊薗さんの役は以前も書いたのですが、きむかずさんから坊薗さんへの信頼が見える凄い役です。これが出来る人はなかなかいないと思います。サブテキスト(行動の裏の思考)の張り巡らされ方、人との距離のその場その場での変化の細かさ、幅の広さ。近かったり遠かったり、ちょっと捻ったり。どちらも誰もが無意識日頃やっていることなのですが、いざ演じるとなるとほんの少しでも難しいものです。ただでさえ難易度が高いのに、変化の幅が広い広い。技量もさることながら坊薗さんの存在感がなければ成立しないかもしれません。よく書いたなーよく成立しているなーさすがやなーと言う感じです。

ちなみにこの役を理解する上での注意点として、開演直後、彼女が何をしているか、よく見て、聞いてみてください。彼女がどういう状況におかれていて、なぜここへ来ているか。それを理解出来ると、スッと通る部分があります。でも重要な情報がかなり序盤に出てきていて、かつ情報の出方が丁寧すぎてうっかり聞き逃しやすい感じになっているので注意です。あえてヒントを書くとすれば、キーワードは「介護」です、かね。

最後は、無隣館の堀紗織(ほり さおり)さん

兄の恋人役。兄とは一緒に住んでいるようです。赤いセーターがめちゃくちゃ似合います。堀ちゃんとは無隣館に入る前から交流がありますが、今回の堀ちゃんはやっぱり私が今までに見たことのない堀ちゃんでした。

今回特に主人公的な存在がいる戯曲ではないのですが、彼女が劇中最も多くの新しい情報を受取る役なので「最も周囲に振り回される」という条件だけ見ると、彼女が最も主人公っぽい立ち位置にいるかもしれません。劇中、彼女自身の「いっぱいいっぱいさ」も出てきますが、戯曲構造上明らかに彼女がイレギュラーとして書かれています。また、私にとっては”同性だから”、というのもあるかもしれませんが、彼女の立ち位置に共感しながら舞台を眺めている瞬間が多くありました。

彼女が一番最後に出てくるところが個人的にとても好きです。

それからそれから小道具とかその扱いにも配慮があってとても好きなので、良かったらぜひ注目してみて頂きたいです。

あと、今公演の特徴のひとつとして○○○のシーンがありますね。これをちゃんと書いてしまうと面白みが減ってしまうと思うので、詳しくは書きませんが、前回「白い衣装のシーン」と書いたところです。きむかずさんによるある種の発明だと思います。写真も、載せないぞ……。なぜかやたらよく撮れているだけに残念ですが……! い、一枚だけ、ネタバレ!

それからもう一つ私が面白いと思っているのは、(主に)串尾さんの役の身体演出でしょうか。なんだか面白いことをしています。ここの意図が恥ずかしながら私はまだ全部つかめていません。少なくとも自分は「そういうもん」として観てしまったので、今度誰か、出来ればきむかずさんに解説をお願いしてみたいと思います。

さてさて、ついに折り返してしまいました!9日(日)で終わりです。詳細はこの後に掲載しております。まだの方、是非ご検討ください!!

いっぱいいっぱい讃歌について

はじめまして。 無隣館という演劇学校に劇作家・演出家として所属している木村和博と申します。 このnoteは『いっぱいいっぱい讃歌』という演劇公演が、いつどこでやるのか、誰が携わっているのかが書いてあります。いわゆる『いっぱいいっぱい讃歌』の概要です。 (作品の内容に関しては別のnoteで公開いたします。)...

確固たる技量を持った俳優であると証明するために修行をしている——外桂士朗(無隣館)

「なんで演劇に関わっているの?」「どうして演劇づくりに携わっているの?」 そう聞かれると、少し緊張します。 その理由を伝えることで自身をさらけ出すことになるかもしれない。うまく伝えられないもどかしさから、説明しやすい理由をでっちあげてしまうかもしれない。 私以外の演劇づくりに携わっている人はどう考えているのだ...

見えないものを可視化するレンズになりたいーー串尾一輝(青年団/グループ・野原)

「なんで演劇に関わっているの?」 「どうして演劇づくりに携わっているの?」 そう聞かれると、少し緊張します。 その理由を伝えることで自身をさらけ出すことになるかもしれない。うまく伝えられないもどかしさから、説明しやすい理由をでっちあげてしまうかもしれない。 私以外の演劇づくりに携わっている人はどう考えているのだろ...

演劇という共通項があれば人と関われるーー堀紗織(無隣館)

「なんで演劇に関わっているの?」 「どうして演劇づくりに携わっているの?」 そう聞かれると、少し緊張します。 その理由を伝えることで自身をさらけ出すことになるかもしれない。うまく伝えられないもどかしさから、説明しやすい理由をでっちあげてしまうかもしれない。 私以外の演劇づくりに携わっている人はどう考えているのだろ...

インタビュー記事、とても面白いです! 坊薗さんのインタビューももうすぐ公開されます!

*公演情報*

無隣館若手自主企画 vol.25 木村和博企画
いっぱいいっぱい讃歌
作・演出:木村和博
2018年12月5日[水] – 12月9日[日] 全6ステージ

会場:アトリエ春風舎

彼らはかつて「ちょっとしんどい」と思えていました。

しかし、言葉を飲み込みすぎて忘れました。ゲップはよく出ます。

ある人は缶チューハイを飲みながらトランスジェンダーアイドルユニットのDVDを眺め、ある人は捻出したお金を風俗に使い、ある人は夢もやりたいこともないまま、社会のまともな方に入ることだけを目指し、ある人は理想の貧困を演じてクラウドファンディングしている。

最近あちこちから、ゲップのにおいが漂ってきます。

【出演】
串尾一輝(青年団/グループ・野原)
外桂士朗(無隣館)
坊薗初菜(無隣館)
堀紗織(無隣館)

【スタッフ】
舞台美術:鬼木美佳(無隣館)
照明:中佐真梨香(空間企画)
舞台監督:久保田智也
宣伝美術:嵯峨ふみか
制作:仙波瑠璃(無隣館)
総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力 :大池容子(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)

【日時】
2018年12月5日[水] – 12月9日[日] 全6ステージ
12月5日(水)  19:30
12月6日(木)  19:30
12月7日(金)  19:30
12月8日(土)14:00 /18:30
12月9日(日)14:00
受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前

【料金】
予約:2,000円
当日:2,500円
*日時指定・全席自由・整理番号付
*未就学児童はご入場頂けません。

【会場】
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原」駅 下車4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※公演期間以外のお問い合わせはこまばアゴラ劇場(03-3467-2743)まで。
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

【チケット取り扱い】
青年団 03-3469-9107 (12:00 – 20:00)
https://komaba-agora.com/ticketsell/

【お問い合わせ】
青年団 03-3469-9107(12:00 – 20:00)
木村和博企画 Mail Ikizuri@gmail.com

【Web】
HP:http://ikizuri.com
note:https://note.mu/ikizuriikizuri
Twitter: @ikizuriーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

企画制作:青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場

文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会

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