こんにちは、木村恵美子です。
無隣館若手自主企画2月2本目! というこのタイミングで執筆に使っているパソコンが動かなくなってしまいまして、公開遅れてすみません!! 今回は無隣館若手自主企画vol.28 福名企画 『そして今日も、明日』の稽古場よりお届けします!!
福名企画。主宰の福名さんはある意味私にとって特別な方です。私が劇作家、演出家として活動していこうと思ったまさに最初の最初っていう時期に出会った同世代の劇作家、演出家で、私とはもはや真逆なんじゃないか、とさえ思えるその存在のあり方、作品にとても衝撃を受けたのを覚えています。私はあんな風には生きられない、と思いました。
ふわふわニコニコしているようで鋭く、どこか達観していて、良い意味でおばあちゃんみたいな発言をすることもある。傍若無人かと思えば壁がある。かつて、今も若いですがもっと若かった頃は尖っていたなんて話も聞いたことがある。きっと優しい人。でも不思議と優しくないような気もする。とても魅力的な、不思議な人です。
最初の出会いから数年を経て、彼女は良い作品を作るよ、とあちこちから聞く。まあ正直に言えばちょっと嫉妬もしてる。
住む世界が違うのかしら、なんて思っていたらお互い鳥好きなんてことも最近になって発覚して、なんか多分私と福名さんとはきっと縁があって、ぼんやりながら、長く関わっていくんじゃないかなって予感がしている、そんな方です。
そして、そんな福名さんの、稽古場を、見る。緊張しました。
その日は私が予定があって少し遅れたのもあってか、同じシーンを何度もなんども、繰り返していました。
福名さんがフィードバックをして、俳優さんの力を借りて、でも通すところは頑固と思われるほどかっちりと通し、その作品のように緻密に緻密に、でも穏やかに、稽古を進めていました。そしてずっと福名さんはニコニコしておりました。演出家がニコニコしてるって大事だなって改めて思いました。
今回の稽古で印象的だったのは、矢野昌幸さん。
私は今まで観てきた矢野さんの出演作から、矢野さんは飛び道具的なところをやらせたらピカイチという印象が強く、会話劇に強い印象のある他の3名とは異質なキャスティングだな、と思っていたのですが、矢野さんの会話劇、めっちゃ良かったです。私は思わず帰りに呟きました(笑)
福名企画の稽古見てきたんですが、実は矢野さんのこんな落ち着いた芝居を木村は見たこと無かったんですけど矢野さんとても良かったので、矢野さんの落ち着いた芝居見たことない皆さん、一緒に驚いて欲しい。本番までに落ち着きのない演出追加でつく可能性は残っているがそれは今は考えないでおきたい。 https://t.co/OOPzSYeDVO
— 木村恵美子 (@lo0__0ol) February 1, 2019
(そしてこれを書いているいま、既にゲネプロを拝見してしまった後なんですが、うん、やっぱりよかったです。)
矢野さんの魅力がすごく良く出ている、素敵な当て書きだと感じました。
役者紹介ラストを飾る矢野さん
当初は矢野さんが未確認生物のようで怖かったのですが
今は人間の部分に触れる機会が増えて、稽古場をホットにしてくれる貴重で素敵な俳優さんだと思ってます
あと、お腹が凄く弱い https://t.co/rVmab6cbFt— 福名理穂 ぱぷりか・福名企画《次回公演》2019.2/16-24アトリエ春風舎 (@kozinsyugi) February 10, 2019
未確認生物、わかります福名さん。でも矢野さん、やさしい方ですよね。
青年団の堀夏子さん。
無隣館関係では『革命日記』にも出演されておりまして、『無隣館の窓』的には『日本文学盛衰史』でも関わらせていただきました。いつも私が困っている時にスッとフォローを入れていただいておりまして、何度も助けていただき本当に感謝しております。
もう、会話劇では信頼出来る方なので、ただ楽しみでした。
こう、言ってはなんですが、福名さんの怖いもの知らずな当て書き炸裂、という印象でした。
何年も前に1度、堀さんを舞台で見たことがあります
その時の佇まいが印象的で、勇気を振り絞りお声かけしました
今回、出演が決まり緊張も沢山してましたが気さくでよく稽古場で笑いあってます
可愛らしく照れてる姿が超萌えます、是非観て欲しい、萌えポイントです https://t.co/alqRSFJ7vX— 福名理穂 ぱぷりか・福名企画《次回公演》2019.2/16-24アトリエ春風舎 (@kozinsyugi) February 6, 2019
この作品の恐らく、真ん中に近いところにいる役。
他者に甘えられる、と甘えられない、のアンバランスさ、
優しい、のだけれども優しいからこそ残酷なのかもしれない。私にとっては共感と違和感を共存させる役。
こういう揺れ動きを描けるからこそ福名さんは強いのよね、という気持ちになれる。
堀さんは稽古場で拝見するたびにいつも楽しそうにされている印象が強くて、今回ものびのび楽しんで稽古されている印象で、なんだかこちらまで嬉しい気持ちになります。
次に、秋本ふせんさん。
ふせんさんの存在感、佇まい、好きなんですよね。良い脱力感がある。
最近は会話劇は少なかったらしいのですが、こういう方こそ会話劇映えますよね、と木村は思います。
堀さんとふせんさんの共演はめっちゃ好きです。ずっと見ていたい気持ちになる。
この役も難しい役だな、と思いました。なんだか、共感出来るようで、出来ないようで、でも、突き付けられているようで、福名さんはどうして彼女をこういう人物として描こうと思ったのか、気になりました。聞きそびれたので今度聞きたいと思います。
本日は秋本ふせんさん
出会った当初は髪の色を抜いて、すげー綺麗でオシャレで、一目でどんな方なんだろうと思ってました
初めてキチンと会話した時、誕生日が1日違いというのを確認しあい勝手に懐いたのが、この私です!
寛容な優しきお方、ありがとう、いつもありがとう https://t.co/d99ouoZhTY— 福名理穂 ぱぷりか・福名企画《次回公演》2019.2/16-24アトリエ春風舎 (@kozinsyugi) February 8, 2019
福名さんも書かれてますが私もふせんさんは金髪の印象が強く。
最初ちょっとびっくりしたもののとてもやさしい方で、なんか色々合わさって魅力的! と思ったのを覚えております。
うん、そんなふせんさんへ福名さんからの愛がこもった当て書き、だと思います。
最後は佐藤岳(さとうがく)さん。
木村おそらく最近の岳さんの出演作を結構拝見していると思うんですが、
キャストが発表された瞬間に、福名理穂×佐藤岳は絶対合うでしょ!!!
と思いました。間違いありませんでした。
惜しむらくは、岳さん最近こういう佇まいの役続いてしまってるような……って感じではあるんですが。
でも、その分安定。鉄板。や、あくまで木村としての分類であって全然違う役割ではあるんですが。やっぱりこの俳優さんは魅力的だよねって思える、そんな役かと。
少し涙腺が緩みますね
佐藤さんのことは、がっくんと呼んでいます
年上です。今回の出演者はみなさん年上ですが唯一「くん」呼びです
そして、誰かが水をこぼしてもすぐに動けない仲間です
がっくんの発する言葉は、チクチクと刺さって、福名は頷きながら演出席にいます https://t.co/Zz1pC2Q5MT— 福名理穂 ぱぷりか・福名企画《次回公演》2019.2/16-24アトリエ春風舎 (@kozinsyugi) February 7, 2019
穏やかで周りをじっくり見ていて、丁寧に言語化していく方だと思っています。役者コメントにもそれが表れてますね。岳さんの発信する言葉、もっと見てみたい、です。
これはちょっとネタバレなんですが、今回、セリフが福名さんの地元の言葉、広島弁であるものが大半で。聞くところによると台本を福名さんが読み上げて、録音して、言い方を伝えたそうです。「意味は合っているが標準語でしゃべってしまう」等の言い間違いも散見され、皆さん苦戦していましたが、木村はめちゃくちゃ感動しました。俳優凄い。木村自身は関東のほとんど方言の無いエリアで生まれ育ったので、方言には強い憧れがあります。そしてそれを、今回作家としても改めて痛感させられました。
「これが、福名さんの母語なんですね?」
って、まず福名さんに聞きました。よく、関西出身の俳優さんとかが、標準語のセリフを関西弁で喋ってもらうことで、表現がガラっと変わることがあります。で、たいていの場合地元言葉の方が実感がこもるのです。「英語で喋ると性格が変わる」みたいな現象に近いものだと思うのですが(ちなみに自分も含め、「口語で喋るより文語で喋るほうが楽」って人種もいるので面白いです)、書く側、劇作家にもそういうことがあるんだな、と思いました。
劇の場としてはただの宅飲み。でも広島弁で描かれていることでそこに恐ろしいほどの実感が乗る。なんだこれ。って思いました。福名さんは作品毎に作品に合わせて言葉を変えることをしているそうなんですが、今回この題材を「広島出身の東京在住の人たち」という書き方をしたのはかなり正解だな、と思いました。おそらくその背景が、グッと登場人物たちを「作家本人に寄せる」ことを実現しているのだと思います。
稽古の間のだめだしの時に、普段東京では標準語で話している福名さんがつられて広島弁になっているのが面白かったです(笑)
いいなあ、って言っている私に、「でも東京出身の人の東京観は私たちには持てない」し、「結局持ってるものは人それぞれ」で、「それでやるしかないのは一緒」という話をしてくれて、本当にそうであるなあと思いました。凄い、私的に学び、発見の多い稽古見学でした。
すみません今回遅れてしまって記事公開前日の16日より公演が始まっております! 舞台美術、照明、音響がシンプルな割にめちゃくちゃ良くて、とても素敵な劇空間になっておりました。書いている今まだどの回もお席があるようですが、詳細は福名企画(福名さんの企画「ぱぷりか」アカウント)Twitterからご確認ください!
じんわり、人の想いが描かれている作品がお好きな方にはぴったりはまるのではないかと思います! 劇場にてお待ちしております!
**公演情報**
無隣館若手自主企画 vol.28 福名企画
そして今日も、朝日
作・演出:福名理穂
2019年2月16日[土] – 2月24日[日]
[ぱぷりか]としても活動している、無隣館演出部の福名理穂が描く。今作は、学生時代に仲の良かった友人の死を知り、生きる事に違和感を感じながら過ごす日々と、少しの後悔と、昔と今と、そして人との繋がりをじんわりと感じさせる物語。
「中学時代の友人がなくなりました。
ニュースにもなって、ネットにも乗りました。
当たり前のように、私の取り巻く日常は何も変わりませんでした。」
無隣館演出部の福名理穂が主催の企画公演、福名企画。
広島県出身。2014年ぱぷりかを旗揚げ。
劇団公演では全公演の作・演出を務める。
主に会話劇を中心とし、人との繋がりで生まれる虚無感を描く。
「孤独な気持ちを抱えていても本当は一人ではなかったり、歳を重ねても大人になりきれない人々」を描き、観た後に人の温もりを感じるような作品を作りたいと奮闘している。
【出演】
堀 夏子(青年団)
秋本ふせん
佐藤 岳(無隣館)
矢野昌幸(無隣館)
【スタッフ】
美術:鬼木美佳(無隣館)
音響:櫻内憧海(無隣館 / お布団)
音響操作:小山都市雄(無隣館)
照明協力:井坂浩(青年団)
舞台監督:黒澤多生(無隣館)
制作:蜂巣もも(グループ・野原/青年団演出部) / 井上 哲
制作補佐:吉益美帆(無隣館)
演出助手:髙野友靖(無隣館)
総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力:大池容子(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
【日時】
2019年2月16日[土] – 2月24日[日]
2月
16日(土) 19:30☆(プレ公演)
17日(日) 14:00
18日(月) 19:30
19日(火) 休演日
20日(水) 14:30/19:30
21日(木) 19:30
22日(金) 19:30
23日(土) 14:00/19:00
24日(日) 15:00
受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前
【料金】
予約一般 2,200円
当日一般 2,500円
☆プレ公演 予約当日ともに 1,000円
*日時指定・全席自由・整理番号付
*未就学児童はご入場頂けません。
【チケット取り扱い】
青年団 03-3469-9107 (12:00 – 20:00)
オンラインチケット予約はこちらから
【会場】
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原」駅 下車4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※公演期間以外のお問い合わせはこまばアゴラ劇場(03-3467-2743)まで。
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。
【お問い合わせ】
青年団 03-3469-9107 (12:00-20:00)
ぱぷりか http://puprika.wixsite.com/papu
ぱぷりかTwitter https://twitter.com/pap926