青年団·こまばアゴラ演劇学校“無隣館”『北限の猿』Aチームの稽古場より

こんにちは!木村恵美子です。

もう公演も残りわずかとなってしまいましたが、今回は『北限の猿』の稽古場よりお届けします!

無隣館2年間のラストとなる公演、青年団国際演劇交流プロジェクト2019、3本立てのラストとなる演目です。『カガクするココロ』、『その森の奥』も拝見しましたが、全て少しずつリンクしていて、とても興味深い観劇体験でした。また、平田オリザ作品を海外の方が演じると、空気感が変わるのがとても印象的でした。”人間関係”を浮かび上がらせる作風なのだと実感させられました。今回『北限の猿』でも、AチームとBチームで、同じ戯曲であり、演出も大きな変更はない、にもかかわらず、研究室の雰囲気が大きく違ってくるのが印象的でした。

今回は、出演者の皆様の紹介をしつつ、チーム毎の雰囲気についても触れていけたらと思います。

まず研究生・大学院生役です。

久保(農学部)役の中藤奨さん(青年団)
※シングルキャスト
中藤さんは上演中ずっと舞台上を動き回っているイメージです。中藤さんはシングルキャストなのですが、関わる人がABで変わるので、結果的に彼の印象も変わる面白い役です。なんだか一年中お名前を拝見している気がするのですが、今回記事を書くにあたって、実はそんなに接点が無かったことに気づき驚いています。存在感が強い方です。
Aチームの方がずるい人に見える気がします。

木元良二(霊長類研究所)役の佐藤岳さん(無隣館)
※シングルキャスト
岳さんの役はABで妻(木元敏子)役の女優さんが変わるのですが、それに伴って岳さんの印象が変わります。楽しいです。岳さんは同じ人なのに、性格まで変わって見える気がします。Aの方が少し落ち着いた人物のように自分は見えております。ダメな若者の役を演じているのを観る機会が多い印象でしたが、私はこういう役の岳さんもはまってると思います。

木元敏子(霊長類研究所)役の渡辺香奈さん(青年団)
※ダブルキャスト
笑顔が素敵です。私はBチームの稽古を先に拝見していたので、初めて見た時はめちゃくちゃ驚きました。木元敏子はこういうやり方もあるのか!Bの岩井由紀子さんとは解釈が全然違うのです。同じ役ですか!?というくらいです。
何か発言するたびに場が和らぎ、凄いなと思いました。Bチームと是非比較していただきたい役の一つです。

竹越(心理学)役の和田華子さん(無隣館)
※ダブルキャスト
和田さんもBチームは全くアプローチが異なるのです。凄く面白いです。セリフは全く一緒なんです。なのに……!
今回の竹越役は私が今まで拝見してきた和田さんの役の中でも最も力が抜けた、というのか、自然な居方のような気がしておりまして、ストンと腑に落ちるようで、とても好きです。

戸塚(社会生物学)役の木村トモアキさん(無隣館)
※シングルキャスト
トモアキさんはなぜそういう役を振られるのか!私個人的にはとても謎ですがとても魅力的だとは思っているので応援しております。あーいるいるこういう人!でも普段のトモアキさんは全然違う感じだぞ……と思う役なので(もちろん知らない面はいっぱいあるはずですが)、見るたび不思議な気持ちになります。ふざけ散らかして見えますが、見るたびに終盤のあるセリフの印象が違うのが面白いです。

佐藤(生物)役の黒澤多生さん(無隣館)
※シングルキャスト
多生さん、マジで良い仕事します。あまり大きな見せ場は無い役ではあるんですけれども、細かく良いです。個人的に特に好きなのはエレベーターに乗って去る久保に呼びかけるところとかなんですけど、塩梅が絶妙です。

杉浦(生物)役の村田牧子さん(青年団)
※シングルキャスト
村田さん!個人的には一番シングルキャストの中で芝居に変化が出ている方だと思うのです。シングルキャストのメンバーの中でもダブルキャストのメンバーとの絡みが最も多い人物なんですよね。数回観る機会があったら村田さんに注目して見てみたいです。俳優さんって、演技の柔軟性って、すごいです。重ねて言いますが、セリフは同じ、なんです。

清水(生化学)役の川隅奈保子さん(青年団)
※ダブルキャスト
川隅さんの役もAチームとBチーム(坊薗初菜さん)で印象が違うのです。
川隅さんバージョンは上演序盤の、西さんとのやりとりがとても好きです……。お客様に断りを入れつつ、説明もしつつ、話を進めていく淀み無さよ……。(そしてここのやり取りに入っていく和田さんも好きです。)個人的に、川隅さんと坊薗さんと、お芝居の感じとか解釈等はそれぞれ全く違うのに、人間関係における”役割”はほぼ共通させている感じが絶妙で感動しています。

辻本(言語学)役の山中志歩さん(無隣館)
※ダブルキャスト
辻本役も面白いんですよ……。山中さんと西村さん(Bチーム)が同じ役なんてなかなかあることじゃないですよたぶん……。言語学の研究舎の方については良く知らないのですが、Aチームは山中さんの独特の喋り方が凄まじい質感を伴っている感じが彼女が言語学を追求する裏側が垣間見えるようでとても好きです。

以上が研究生・大学院生です。続いて

吉川(大学生)役の石渡愛さん
※ダブルキャスト
私木村は学生時代、分野は違えど生物学を専攻していたんですが、稽古見学に行った時に石渡さんの今作の雰囲気が学生時代の友人たちのあれこれを組み合わせているような印象を受けて、「いるいる、こういう生物女子……!」という衝撃を受けました。凄い懐かしい感じがしました。この役もダブルキャストなのですが、Bチームの南風盛さんとも全然違います。この役も面白いです。

谷本(大学生)役の西風生子さん(無隣館)(写真奥)
※シングルキャスト
西さんは……、面白いですよ……。何度見ても「この役はどうやって成立させているんだ……」と私はひそかに思っております。今までこの役をやってきた方はどんな風にやってきたのか……。成立させるのに一筋縄ではいかないかに見えるセリフばかりなんですけど、西さんの佇まい込みで成立している気がします。興味深いです。

高木(研究室OBのセールスマン)役の森一生さん(青年団)
※シングルキャスト
森さん、『その森の奥』にも出ておりました!実は無隣館3期メンバーでもあります。『その森の奥』ではもっと話しているところが見たいと思っていたのですが、今回の高木役は正直はまり役だと思います。オセロに誘う流れの強引なのに自然なあの感じが好きです。

平山(事務員)役の本田けいさん(青年団)
※ダブルキャスト
『革命日記』にも出演されていた本田けいさん!本田さんの役もAチームとBチーム(緑川史絵さん)で全く違います。お2人の場合はちょびっと演出も違います。本田さんがスマートで緑川さんがキュートな感じだと思います。本田さんのの方が劇中でのギャップが少しあるような印象です。

久保明子(久保の妻)役の藤瀬典子さん(青年団)
※ダブルキャスト
こちらの役も面白いです!!登場時間は短いのですが印象が強い役です。Aチームの藤瀬さんとBチームの小野さんではギャップがかなりあり、戯曲への印象も変わるくらいです(改めて申しますがセリフと演出はほぼ同じです)。いつもほんわか優しい藤瀬さんなのですが、舞台上での出来る女感が凄いです。女優さんて凄いですよね……。

戸塚良子(戸塚の妹)役の名古屋愛さん(無隣館)
※シングルキャスト
近年の出演作において凄まじい確率で「兄のいる妹」役を任されている名古屋さん。まさかの今回も、でちょっと驚きました。でも今回はちょっとしっかりした人物っぽいのが楽しいです。個人的には兄役の木村トモアキさんとだんだん似ているような気がしていて観ていて笑ってしまいます。

以上、おひとりおひとり書いていたら大変な分量になってしまいました……。でも、楽しいんです今回のダブルキャスト! 戯曲やお芝居の可能性、幅についてとても考え直させられる機会でした。引き続きBチームの分も書いておりますので併せて読んで頂けたら嬉しいです!

諸事情ありまして公演も残りわずかでの記事公開となり申し訳ありません……!
1チームずつでもとても面白い作品なのですが、両方見ると視野が広がる、そんな公演だと思うのです。ぜひ両チーム観劇をご検討いただけましたら嬉しいです。
詳細は青年団のホームページと、Twitter等でご覧いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

**公演情報**

青年団·こまばアゴラ演劇学校“無隣館”
『北限の猿』
作・演出:平田オリザ

(1992年初演)*科学シリーズ第2作
日本の某国立大学の生物学実験室。
遺伝子操作の技術が急速に進む中、猿を人間へと進化させる「ネアンデルタール作戦」はより進展し、作戦をいよいよ実行へと移そうと全国から猿の専門家たちが続々とこの研究室にやってくる。遺伝や進化などの最先端技術の話題から、自分たちの恋愛や結婚といった日常にまで飛び交う雑談。日本が世界に誇る「猿学」から、独自の人間論、日本人論が展開していく。
[日本語上演]*A、Bチームによるダブルキャスト公演

こまばアゴラ演劇学校“無隣館”
こまばアゴラ劇場と青年団により、2013年度より新たに設けられた若い演劇人のための育成機関。 2年をひとつの単位とする形で、1年次は、主宰の平田オリザをはじめ、青年団演出部、関連団体の演出家、劇作家、俳優によるワークショップ及びアートマネジメントや舞台技術に関する様々な講座を受講し、青年団有志との合同公演を行う。2年次は、希望者が専攻科として引き続き研修を行い、青年団有志との合同公演の他、無隣館演出部を中心に“無隣館若手自主企画”の立ち上げを実施している。

【出演】
Aチーム
渡辺香奈 川隅奈保子 村田牧子 本田けい 中藤 奨 藤瀬典子 森 一生(以上、青年団)
石渡 愛 木村トモアキ 黒澤多生 佐藤 岳 名古屋愛 西風生子 山中志歩 和田華子(以上、無隣館)

Bチーム
村田牧子 緑川史絵 岩井由紀子 中藤 奨 西村由花 南波 圭 森 一生(以上、青年団)
小野亮子 木村トモアキ 黒澤多生 佐藤 岳 名古屋愛 西風生子 南風盛もえ 坊薗初菜(以上、無隣館)

【スタッフ】
舞台美術:杉山 至
装置:濱崎賢二
照明:三嶋聖子
衣裳:正金 彩
字幕:西本 彩
舞台監督:武吉浩二 播間愛子
韓国語通訳:イ・ホンイ
フランス語通訳:平野暁人
宣伝美術:西 泰宏
制作:林有布子 西尾祥子(システマ) 金澤 昭 赤刎千久子

【公演日程】
18日(木) 19:30 北限の猿 A
19日(金) 19:30 北限の猿 B
20日(土)14:00 北限の猿 A
21日(日)14:00 北限の猿 B/18:00 北限の猿 A
22日(月) 19:30 北限の猿 B
23日(火)14:00 北限の猿 A/19:30 北限の猿 B
24日(水)休演日
25日(木)14:00 北限の猿 B/19:30 北限の猿 A
26日(金) 19:30 北限の猿 B
27日(土)14:00 北限の猿 A/18:00 北限の猿 B
28日(日)14:00 北限の猿 A
受付開始=開演の40分前、開場=開演の20分前。

【会場】
こまばアゴラ劇場
京王井の頭線「駒場東大前」駅 東口より徒歩3分
東京都目黒区駒場1-11-13 [google map]
tel:03-3467-2743
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

【チケット料金】
『北限の猿』
一般=2,500円
ユース・シニア=2,000円
高校生以下=500円
*日時指定・全席自由席・整理番号付
*ユース(26歳以下)・シニア(65歳以上)、高校生以下の方は当日受付にて年齢・学籍を確認できる証明書をご提示ください。
*未就学児はご入場いただけません。
*会場の都合上、開演時間を過ぎますとご入場いただけない場合があります。ご注意ください。

【チケット取り扱い】
青年団 03-3469-9107 (12:00 – 20:00)
オンライン予約はこちら

【お問い合わせ】
青年団 03-3469-9107(12:00 – 20:00)

【公演詳細ページ】
http://www.seinendan.org/play/2019/04/6895

企画制作:青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
共同制作:韓国芸術総合学校、リムーザン国立演劇センター付属演劇学校
協力:城崎国際アートセンター(豊岡市)
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場·音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする